2013/05/12

Lojban Lessons - 0章

Lojban Lessons - 0章

[注: この章は、”手抜き”な章です。lojban for beginnersの音韻論のページと同じものです。これには理由がありまして、テキストで音声を学ぶのは不合理だからです。wavelessonは文法講座ですので、音声については簡単に触れることにします。]

外国語を学ぶにあたっては何はともあれ、その言葉の音の感じ、書き方に慣れ親しむのが肝要です。ロジバンでも同じことが言えます。幸い、ロジバンの音韻論(phonemes)はとても素朴なものとなっています。


母音

ロジバンには6つの母音があります。


a"father" のa ("hat"のaではない)
e"get" のe
i"machine" のi  ("hit"のiではない)
o"bold" や "more" の o  ("so"のoではない)
u"cool" のoo  ("but"のuではない)

これらはイタリア語やスペイン語とかなり似ています[注:日本語にもわりと近い]。6番目の母音はyで、曖昧母音といわれるものです。英単語の"America"のaに近い音です。口の力を完全に抜いて、リラックスした状態で「あ」と発音してみてください。その音がyです。
ふた続きの母音は一音で発音します(diphthong, 二重母音)。例を挙げます:


ai"high" (ハィ)
au"how" (アゥ)
ei"hey" (エィ)
oi"boy" (オィ)
iaドイツ語の"Ja" (ヤ)
ie"yeah" (イェ、ヱ)
iu"you" (ユ)
ua"waah!" (ワ)
ue"question" (ウェ)
uo"quote" (ウォ)
ui"we" (ウィ)
[注:ia,ie,iu,ioはひらがなのヤ行にあたります。ua,ue,uo,uiはワ行(わ、うぇ、うぉ、うぃ)にあたります。]

連続で同じ母音が来ることは稀です。例えば ii や uu があります。iiはヰ(ヤ行のイ)、uuはウ(ワ行のウ、あ行のウより唇を尖らせる)と発音します。


子音

子音は英語と(日本語とも)ほぼ同じですが、いくらか例外があります。


ggum のgであって、gem のgではない。(常にひらがなのガ行の音)
cship のshの音 (ひらがなのシャ行の音)
jmeasure のsの音 (ひらがなのジャ行の音)
xドイツ語のBach のchの音 (日本語には存在しないが、カ行とハ行の間みたいな音)

英語のch(ひらがなのチャ行)とj(ひらがなのヂャ行)はそれぞれ tc と dj で表します。
ロジバンではH,Q,Wの文字は使いません。

[注:詳しい発音の仕方はCLL3章にありますので、そちらを参考にしてください。→そちら]

特殊記号

ロジバンには句読点が存在しませんが、いくつかの特殊記号(カンマやピリオド)は発音の仕方に関わってきます。
ロジバンで必須の記号はアポストロフィだけです。ロジバンではアポストロフィーはれっきとした文字の一種なのです。アポストロフィはふた続きの母音を別け隔て、一音で発音されるのを防ぎます。アポストロフィそれ自体は"h"の音(ハ行)です。たとえば、ui はウィ、ですが、u'i はウヒとなります。

ピリオドは語と語が続けて読まれるのを防ぐ、小休止の役目をします。逆に言えば、「黙る」こともロジバンではれっきとした「文字」なのです。ある単語AとBを続けて読むとき、Bの語頭が母音の場合、AとBを繋げて読んでしまいがちです。なので、語頭が母音で始まる単語には、慣習的に必ずピリオドをつけることになっています。
[注:続けて読むのは英語圏の人に顕著ですね。in a park を「イナパーク」と読みますから。日本語話者である我々は特に何も考えず、フツーに読めばいいと思います。]

カンマはロジバンでは稀ですが、ふた続きの母音を1音で発音したくはないがアポストロフィを入れたくもない(入れるとハ行の音が入るので)ときに使えます。ロジバン内来の語にカンマはまったく出てこず、非ロジバン語(個人の名前とか)を書くときに出てきます。たとえば、.pi,ER("Pierre"「ピエール」)、.pier ("P-yerr"「ピェール」)、 .pi.ER. ("Pee; Ehr"「ピー、エール」)、 .pi'ER. ("Piherr"「ピヘール」) をそれぞれ見比べてみてください。

大文字はロジバンでは普通は使いません。非ロジバン語(Pierreのような)のアクセントをロジバン内来語と異なるところに置きたいときに使います。普通は最後から二番目の音節にアクセントを置きます。たとえば、kujmikce 「看護師」は kujMIKce と読みます。 かの悲劇のヒロインの名前でもある "Juliette" は、英語読みかフランス語読みかで異なりますが、 .DJUli,et. や .juLIET. となります。


アルファベット

言語の教科書では大体、音と共にアルファベットが書かれているものです。文字(lerfu という)はロジバンでは他言語よりもいっそう重要であることが後にわかるとは思いますが、ここでさっと文字の「名前」「呼び方」について見ておきましょう。
子音の名前はいたって簡単です。子音のあとに曖昧母音のyを付け加えればよいのです。なので、ロジバンでは b, c, d, f, g, .... はそれぞれ、 by. , cy. , dy. , fy. , gy. , .... となります(さっき書いたように、語が後続の語と繋がらないようにピリオドを打っています。)。[注:ちなみに日本語なら、ビー、シー、ディー、エフ、ジーですね。] 
 母音も同じようにyをつければいいと思うかもしれませんが、かなり発音しにくいですね(.ay.を発音できますか?)。なので代わりに bu を後ろにつけます。 bu は本来「文字」という意味です。というわけで、ロジバンでは a, e, i , o, u, y はそれぞれ、 .abu, .ebu, .ibu, .obu, .ubu, ybu. となります。
アポストロフィもれっきとした文字の一つですので、読み方があります。 .y'y. (ァハァ)です。咳払いとか"uh-huh"のように聴こえるかもしれません。
ロジバンでは、あなたが思いつくような文字のほとんどに呼び名をあてることができます。もしどうしても、H, Q, W をロジバンで言いたいのであれば、 .y'y.bu, ky.bu, vy.bu. と言えます。

ここで一度、ロジバンで自分の名前を書いてみましょう。


ロジバン名 (cmevla)


お互いの言葉が分からないというようなシーンのある映画を見ると、彼らはきまってまず「私、Tarzan」というようなことからコミュニケーションを取りはじめるはずです。これはロジバンを学ぶ際にも良い出発地点となりそうです。

mi'e .robin.
「私はRobinです。」

mi'e は「私(I,me)」を意味するmi と関係があります。ふた続きの母音をアポストロフィが分け隔てている語のいい例ですね。
ロビンは自分の名前をそのままロジバンでも使えるのでラッキーです。しかしながら、実際はロジバン名のための規則がいくつかあり、すなわち、「ロジバン化」をしなければならない名前もあるのです。これはちょっと不思議に思われるかもしれませんが、あらゆる言語はこういった「変形」をある程度行なっているのです。例えば、英語圏の人はスペイン語のJoseをHozayのように、中国語のMargaretをMagelitaと発音しようとします。その言語体系に存在しない音もあるわけです。とにかく、自国での名前をロジバンの音のみで構成し直し、ロジバン流に綴りを変えていきましょう。
[注:日本人もlittleをリトルと発音したりします(実際の発音はリロゥって感じですが)。外来語というのは、その言語にある程度影響されてしまうわけです。]

Note: ここで言いたいのは、どのような音声体系を使うか?ということです。ひとえに英語と言えど、イギリスとアメリカでは発音がかなり異なったものもあります。 イギリスのRobinは素直に大体 robin. と発音されますが、アメリカでは rabyn. とか rab,n. に近いです。この二国間でさえ、かなりの多様性があるわけです。なので、下に書いた訳例も鵜呑みにせぬよう注意してください。

さて英語の名前 Susanをロジバン化してみましょう。ふたつのsは異なった発音であり、二番目のsは実際は z の音です。aも実のaの音ではなく、さっき述べた曖昧母音(schwa)です。これらを踏まえて、Susan はロジバンでは .suzyn. となります。
語頭と語尾にピリオドがあるのに気づきましたか?その名前がどこからどこまでであり、次の語がいつ始まるのかが分からなくなるので、名前の前後のピリオドは必須です。

姓と名の間にピリオドを打ってもかまいません(強制ではないです)。なのでJim Jones は .djim.djonz. とできます。
名前をロジバン化するにあたって、もうひとつ大事な規則があり、cmevla(ロジバン名)の語尾は必ず子音にします。これも、どこからどこまでが名前なのかを明確にするためです(他のロジバン単語はすべて母音で終わる)。語尾を子音にするために、大抵はsを付け加えます。なので、ロジバンでは、Maryは .meris. になり、 Joe は .djos. になります。他に、最後の母音を消す方法もあり、その場合はMary は .mer. とか .meir. になります。

最後に、アクセントの話をします。さっきも言いましたが、ロジバン内来語では後ろから二音節目にアクセントを置きます。もし違うところににアクセントを置きたいときは、大文字を使います。つまり、英語とフランス語の名前 Robert はロジバンではそれぞれ異なって、英語読みでは robyt. (イギリス) や rab,rt. (アメリカの方言) となりますがフランス語読みでは roBER. となるわけです。

一連の作業の参考のために、以下に有名人のロジバンでの名前を載せておきます。

English
Margaret Thatcher.magryt.tatcyr. (ロジバンには"th"の発音はありません。発音できる人が少ないのです!)
Mick Jagger.mik.djagys.
French
Napoleon Bonaparte.napole,ON.bonaPART.
Juliette Binoche.juLIET.binOC.
Chinese
Laozi.laudz.
Mao Zedong.maudzyDYN. (語尾のngはロジバンでは慣習的にnにします。)
Turkish
Mustafa Kemal.MUStafas.keMAL.
Erkin Koray.erkin.korais.
German
Friedrich Nietzsche.fridrix.nitcys.
Clara Schumann.klaras.cuman.
Spanish
Isabel Allende.izaBEL.aiendes.
Che Guevara.tcegevaras.


Exercise
次の場所はどこにあるでしょう?


1. .nu,IORK.
2. .romas.
3. .xavanas.
4. .kardif.
5. .beidjin.
6..ANkaras.
7. .ALbekerkis.
8. .vankuver.
9. .keiptaun.
10. .taibeis.
11. .bon.
12. .delis.
13. .nis.
14. .atinas.
15. .lidz.
16. .xelsinkis.


答え:
1. New York: アメリカ
2. Rome: イタリア
3. Havana: キューバ
4. Cardiff: ウェールズ
5. Beijing: 中国
6. Ankara: トルコ
7. Albequerque: ニューメキシコ, USA
8. Vancouver: カナダ
9. Cape Town: 南アフリカ
10. Taipei: 台湾
11. Bonn: ドイツ
12. Delhi: インド
13. Nice: フランス
14. Athens: ギリシャ
15. Leeds: イングランド
1Helsinki: フィンランド
[注:この地名の綴りは英単語をロジバン化したものです。それぞれの国での言い方をロジバン化するとまた綴りは違ってきます。たとえば、日本は .ni'on.でも .japan. でもあるわけです。]

Exercise.
次の名前をロジバン化しなさい。[注:この問題は日本人にはかなり難しいと思います。解答例は、これらを英語読みした通りの綴りです。頑張ってやってみてもいいですが、飛ばしても構いません。]
  1. John
  2. Melissa
  3. Amanda
  4. Matthew
  5. Michael
  6. David Bowie
  7. Jane Austen
  8. William Shakespeare
  9. Sigourney Weaver
  10. Richard Nixon
  11. Istanbul
  12. Madrid
  13. Tokyo
  14. San Salvador
Answer: 
一般的に、名前に対する綴りは何通りかあります。人によってオリジナルの発音の仕方があったり、正確な音というのがロジバンには存在しなかったりするからです。なので、好きなほうの綴りを選んでもいいことになります。他の人がそれを聞いて通じるのであれば何ら問題はないのです。
  1. .djon. (もしくは .djan.)
  2. .melisys.
  3. .amandys. (アクセントにもよりますが、最後のyがaに、最初のaがyに、真ん中のaがeになることもあります。)
  4. .matius.
  5. .maikyl. か .maik,l. 
  6. .deivyd.bau,is. か .bo,is. (.bu,is. はダメです。これはナイフという意味になります)
  7. .djein.ostin.
  8. .uiliam.cekspir.
  9. .sigornis.uivyr. か .sygornis.uivyr.
  10. .ritcyrd.niksyn.
  11. .istanBUL. (英語のアクセント) .IStanbul. (米語のアクセント) .istanbul. (トルコ語のアクセント) 一般的に、ロジバン話者はその地域での発音を好みますが、絶対的なルールではありません。
  12. .maDRID.
  13. .tokios.
  14. .san.salvaDOR. (スペイン語のアクセント)

名前としてのロジバン内来語

今まで、自分の名前をロジバン化してきました。しかし、お望みであれば、自分の名前をロジバンに翻訳することもできますし、まったく新しいロジバンでの名前を採用することもできます。
[注:山本をmountain book とするような感じですね(笑)]
ロジバンの単語(cmevlaを除く)は母音で終わります。名前としてロジバン内来語をそのまま使うこともできなくはないのですが、普通はcmevlaの形にしたほうがよいので、語尾に子音をつけるか母音を省くかしてcmevlaの形にします。
いくつか例を挙げておきます(左から順に 元々の名前―意味―cmevlaの形での名前)。

・ 魚 - finpe - .finp.
・ Björn (スカンディナヴィア語で熊) – cribe – .crib.
・ Green - crino - .crin.
・ Mei Li (中国語で「美」) - melbi - .melb.
・ Ayhan (トルコ語で月の主人) - lunra nobli (= lurnobli) - .lurnoblis.



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